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NSGカレッジリーグ 平成26年度 第5回 志・未来塾

第5回テーマ:「想うは招く」

講師:株式会社植松電機 専務取締役/

株式会社カムイスペースワークス 代表取締役

NPO法人北海道宇宙科学技術創成センター 理事 植松 努 先生



■講師プロフィール

1966(昭和41)年北海道芦別市生まれ。

1989年、北見工業大学卒業後、菱友計算(株)航空宇宙統括部に入社。1994年同社を退社し、植松電機入社。1999年に植松電機を株式 会社に改組し専務取締役に就任。

2006年、株式会社カムイスペースワークス(略称:CSW)を設立し、代表取締役に就任。

全国各地での講演やモデルロケット教室を通じて、人の可能性を奪う言葉である「どうせ無理」を無くし、夢を諦めない事の大切さを伝える活動を 展開。また、2010年より「より良くを求める社会」の実現に向けて、北海道赤平市にて「住宅に関するコスト1/10、食に関するコストを1 /2、教育に関するコストゼロ」の実験を行う「ARCプロジェクト」を開始。

-植松 努 氏

今日は素晴らしい機会をいただき、有り難うございます。先ほど、いくつかの専門学校を見学させてもらいました。とても素晴らしい環境で皆さんは学んでいます。そして、皆さんのスーツ姿もかっこいいです。今日は、僕の取り組みに共感してくれる「仲間」を探すために講演します。だから、皆さんリラックスして聴いてください。

これから、日本は人口が急激に減少する時代を初めて迎えます。もちろん多くの企業が売り上げを伸ばせませんし、給与のベースアップなんて望めなくなります。ほぼ全ての産業が衰退すると、予測されているのです。

しかし、先が見えない時代だからこそ、夢を持つ事が大切です。実は、子供の頃に「自分の夢」という作文を書きなさいと先生が言うので、「潜水艦を作って世界を巡る」という内容を書いたら、職員室に呼び出されました。夢みたいな事を書くなと叱られました(笑)。

友達は皆、大工やスポーツ選手、お医者さん等と書いていましたが、夢って仕事なのでしょうか?そういう夢しか見てはいけないのでしょうか?今できないことを追いかけることが、夢だと僕は思います。

今の世の中、安定して楽をしてお金を貰えるのがいいとされていますが、とんでもない間違いです。だって皆さん、勉強するでしょう?それは、能力を身につけるためですよね。能力を使わずに楽をするのは、明らかに間違いです。また、お金で色々な事が出来そうに思えますが、お金がないとできないのは夢ではなくて「サービス」です。

さて、こんな日本ですから、労働の生産性は低いです。GDP/労働時間という指標では、なんとフランスの半分程度です。でも、見方を変えれば改善できるということです。日本は、改善することで明るい未来が待っているのです。

僕は、北海道の赤平という田舎でロケットを作っています。当初から一人で何でもやってきましたが、一人では限界があり失敗ばかりでした。ロケットなんて作った事なかったし、誰も教えてくれないからです。そんな中で感じた事は、本は本当に素晴らしいということです。それは、過去に多くの人が闘ってきた努力の結果が詰まっているからです。例えば、パティシエが新しいメニューを作るとき、周りからは必ず否定されます。「見た事ない」「変だ」・・・でも、美味しければ認められ、広まり、それがスタンダードになる。現在、身の回りにあるものは、それらの集大成です。本には、それらが生み出された経緯や結果が載っているのです。

人の成功を味わうだけでなく、自分で考えて試したら、自分の個性が身に付いて、その能力が必要とされるようになります。失敗する事に負けてはいけません。そんな時は、「では、どうすればいいか」を考えるのです。どれだけ準備を重ねても、失敗する時は失敗します。人の失敗、自分の失敗に罰を与えてはいけません。「なぜ失敗したか」「次にどうするか」と口に出して、次に進めばいいのです。

僕は、そういうことの繰り返しの中で仲間を頼った時に、信頼が生まれて今の状況に至っています。

今では、僕の会社でロケット・衛星・無重力実験施設まで実現してしまいました。無重力実験装置は、世界に3カ所しかなく、国内では僕の会社だけです。嬉しい事に、たくさんの方が見学に来てくれますし、修学旅行のコースにもなっています。訪れる見学者は年間1万人にものぼります。

実は、世の中で作られている「宇宙に飛び立つロケット」には、意外と古い技術や部品が使われています。なぜならば、失敗できないから新しいものにチャレンジできないのです。その一方で、機械工学や電気・電子工学は飛躍的に発達し、今や衛星に使われる角度センサはNINTENDOのWiiのリモコンに使われているもので実現できてしまいます。(笑)皆さんは、とてもいい時代に生まれたのです。

僕の祖母は樺太育ちでしたが、祖母が「お金は一晩で価値が変わる。貯金なんかせずに、本を買いなさい。」と言っていました。僕は、そんな祖母の教えもあって、よく本を読む子供で、ある日、本屋さんで紙飛行機の本と出会いました。僕は夢中になって紙飛行機作りに取り組みました。実は僕は視力に難があり、遠近感が弱い子供でした。だから、特にボールを使ったスポーツがとても苦手でよく馬鹿にされていましたが、僕の作った紙飛行機は、とてもよく飛びました。体育館の隅から隅まで飛んだのです。友達からとても褒められましたし、とても嬉しくて、本に書いてある設計は全て覚えました。技術書ですから、子供向けではありません。でも、好きだから覚えてしまうんです。ただし、ついに学校のテストには出ませんでしたから、成績はあがりませんでした。(笑)

小学校のとき、プラモデルが流行しましたが、職人だった父は「プラモデルなんて簡単すぎて駄目だ。男だったら、鉄で作れ!」と、強制的に電気溶接とガス切断まで覚えさせられました。(笑)困りました。困った時には、本屋に行くんです。そして、ペーパークラフトの本と出会いました。紙で作れる、立体的な飛行機の設計が載っていました。僕は、これを金属で作ればホンモノの飛行機になると思いました。

近所には、父と同じくもの作りの職人さんたちがたくさんいました。「お前は筋がいい」と褒めてくれて、使わなくなった図面や部品をくれるのです。そして、「世の中にあるものは、全て普通の人が試行錯誤して作ったものだ。世の中にないなら、作ればいいんだよ。」と教えてくれたのです。

僕は、ちょっと変わった子供でした。集団行動ができない、落ち着きがないなどと通信簿からの評価は厳しかったですが、近所のおっちゃん達のおかげで、ますます飛行機のことを勉強するようになりました。

中学校に進学したとき、スペースシャトルが飛びました。機動戦士ガンダムがTVで放送されました。さらに、スペースシャトルに日本人(毛利さん)が搭乗するまでになりました。嬉しかったです。本をたくさん買って勉強しました。毛利さんは、僕と同じ北海道の田舎の人でした。

でも、学校の先生からは「そんなこと覚えてどうする」と言われ、また勉強すればする程、友達との会話も噛み合わなくなりました。「飛行機やロケットの仕事がしたい」と言っても、「東大に行かなきゃ無理だ」「現実を見ろ」と否定されたのです。だから、現実についてたくさん考えました。すると、現実というのは今まで生きてきた過去のことであって、成績が悪いという事実は変えられないことに気づきました。今の世の中には、それで未来を諦めさせる風潮が蔓延しています。そう思ってしまうと、人は今出来る事しか出来なくなります。おかげで、スペースシャトルは二度と飛べなくなりました。アメリカでスペースシャトルを作ってみたい、と思う人がいなくなったのです。これから、世界はロシアのロケットに頼るしかなくなっているのです。

日本は戦後、焼け野原から復興するために、誰かが生み出した1を、10にも100にもコピーして普及する必要がありました。そこでビジネスを支配した大企業は一流と評価されるようになり、入社を希望する人が多数となり、選考する手段として学歴や偏差値で足切りをするようになりました。その途端、大学は企業に入るための手段となり学問や研究がおろそかになりました。高校は大学に入るための手段となり、受験がビジネスとなり、お金で人生に差がつくようになってしまいました。これは、きっと正しい事ではありません。

今でも、大量生産は大事なことですが、知恵と工夫で「高価で少量の販売」でもビジネスは成り立ちます。それがブランドというものです。フェラーリには規定があって、年間7,000台しか生産することができません。トヨタの1,500分の1の生産規模でしかありませんが、フェラーリというブランドは世界的に有名で、企業規模も大きいです。

安く売るから、利益追求のために大量に作らなければならない。これは日本が作った、変な悪循環です。でも、これからの時代は、大量生産の仕事の多くがロボットによって行われます。人が必要なくなるのです。生産、運転、配達・・・ロボットに負けないようになるにはどうすればいいでしょう。それは、「考える人」になる必要があります。アップル、ダイソン、アマゾン等の企業は、今までにない「ヘンな」ものやサービスを生み出して、評価を受けました。これから世の中に必要とされるのは、今までにやったことのないことをやりたがる人、あきらめない人、工夫する人です。では、そんな人達がどこにいるか。ここです。皆さんの事です。

我々は、全員が「子供時代」を経験します。やったことのないことをやりたがる、諦めない、工夫するというのは、子供の持つ好奇心そのものです。

本は、そういう好奇心の実現に味方をしてくれます。飛行機を勉強するためになら、本を通じて、ライト兄弟とだって仲良くなれます。東大に行く事より、ライト兄弟のようになることのほうが偉大です。どんどん勉強して、好きな事を人よりたくさん勉強して、フライングすればいいです。ロボット産業は、鉄腕アトムが好きな人たちが頑張ったから発展したのです。その分野を好きな人が集まって、ひたすら頑張るという意味では、皆さんのいる専門学校は、フライングするには絶好の環境だと思います。

僕は飛行機が大好きでしたから、名古屋にある企業に就職して、飛行機やリニアモーターカーのデザインの仕事ができるようになりました。でも、5年半で退職しました。その企業に、飛行機が好きじゃない人、楽をしてお金をもらいたい人が集まってきたからです。「できないふりをしろ」と言われましたが、僕はそれがいやで、頑張って仕事をしたら嫌われました。人は、楽をしたら無能になります。僕が退職した後、その部署はなくなってしまいました。

名古屋の企業を退職して地元に戻りました。仕事がない中で父の仕事(クルマの部品修理)を手伝いましたが、クルマが壊れにくくなり、壊れたら買い替える時代になり、仕事がなくなっていきました。仕方なく、2000年からリサイクル用マグネットを作る仕事をしました。特殊な事ではありません。金属に電線を巻き付けて電流を流すと、電磁石ができるという、誰もが理科で習ったことです。しかし、他のマグネットよりも強力なものを作ることで、仕事になりました。会社も作る事が出来ました。発明のコツは、嫌な事を我慢してやること、よく考えること、人の役に立つようにすることです。

そのうち、うちの会社で作ったマグネットが壊れたという連絡も入るようになります。そこで、壊れたマグネットを分解して、徹底的に分析しました。そうすることで、どんどん壊れにくい商品になりました。だから、「なるべく売らない」ようにしました。つまり、値切る人に売らないようにしたのです。壊れにくい商品を、安売りせずに売ることによって、無駄な労力を節約して利益率が確保でき、従業員の「時間」が確保でき、研究開発ができるようになったのです。その研究のなかで北海道大学の中田教授と出会いました。教授は、安全なロケットを研究していた方で、この出会いは僕にとって運命だと思いました。

ロケットが危険なのは、液体の燃料を使っているからです。燃料が漏れて、爆発炎上につながりやすいのです。我々は、固体でロケット燃料を研究して実現しました。これも、実現してみれば特別な事ではありません。ポリエチレンというスーパーのレジ袋を作っているものを燃料に応用したのです。

僕は、この安全なロケットを使って、宇宙空間に漂っているゴミ(スペースデブリ)の回収を仕事として実現したいのです。そして、これを日本にしかできないビジネスとして成立させたいと思っています。

人を殺してはいけないのは、人の命を奪うこと、すなわちその人の可能性を奪うからです。しかし、「どうせ、無理」という「言葉」で奪うことは、日常的に行われています。これは、殺人に等しいとさえ、僕は思います。

お金を儲けることは、世の中に存在するお金の分布を変えるだけです。真に「儲ける」というのは、新しいもの(価値)を作り出す事だと思います。

僕は、「どうせ、無理」を世の中からなくしたいです。北海道の会社にだって、ロケットが作れました。無理じゃないと思わせたかったというのが原動力でした。

先ほど言った通り、たくさんの人が会社を見学に来てくれるので、簡単なロケット作りをしてもらいます。でも、具体的な作り方は、教えません。調べ方を教えるだけです。困ったら「こうしてみたら?」とアドバイスをします。皆さんも、「どうせ、無理」と言わず「だったら、こうしてみたら?」と言える人になってください。そして、やったことがないことをやると、自信がつきます。

夢がない・見つけられないという話をよく聞きます。夢をみつけるには、感動すればいいのです。感動は、CAN DOにつながります。NASAの門には Dream can do, Reality can do.と書かれています。思い描くことができれば、それは実現できるという意味です。

教育は、失敗を避けることを教えるのではなく、死なない程度の失敗をして学ぶことに注力すべきだと思います。やらないことをやると、人は失敗するものです。そんな時は、死なない程度に失敗して逃げちゃえばいいです。失敗した悔しさ、恥ずかしさが成長につながります。

人生は、一度っきりです。知恵と工夫が世界を救うのです。そして我々は世界を救う、世界に役立つために生まれてきたのです。

「思うは招く」という母の教えに従って頑張ってきました。そしたら、飛行機やロケットと出会い、仕事にすることができて、NASAで同じ言葉に出会いました。

皆さん、「どうせ、無理」を捨てて「だったら、こうしてみたら?」と言うことで、みんなの夢が叶います。それができれば、皆さんには、素晴らしい未来が待っています。頑張って下さい。僕も頑張ります。

■編集後記

志・未来塾の第一期でお迎えした、フランス料理界の重鎮である小西先生が目標設定・到達型ならば、今回の植松先生は、現状対応・大成功型と言えよう。どちらも、仕事を象徴するユニフォームで講演されたという共通点がありながら、その取り組みがとても対照的で印象深い。

植松先生は、飛行機やロケットに関心はあったものの、最初から一流に向かって突き進むというより、その時々で出来ることを一生懸命にやってきたら、運命の人に出会い、それまでの勉強が土台となって宇宙という活躍の舞台が待っていた。喜多川先生が言う「日本の企業で成功した人には、現状対応・成功型が多い」という話とも結びついた。


中島みゆきがNHKの番組「プロジェクトX」に提供した楽曲「地上の星」は、あまりにも有名である。


 地上にある星を 誰も覚えていない

 人は空ばかり見てる

 つばめよ 高い空から教えてよ 地上の星を

 つばめよ 地上の星は今どこにあるのだろう


植松先生は、大好きな事を突き詰めて、仕事という形で宇宙への道を実現した。今後、植松先生の技術が大いに宇宙開発に役立つだろうし、植松先生はまさに星(スター)と呼ぶべきだろう。しかし、それは手に届かない星ではなく、地上の星なのだ。

学生諸君。我々だって、きっと星(スター)になれる。身の周りにある、人が作ったすごい物は、普通の人が頑張った結果なのだから。そのためには、大好きな事を、とことん突き詰めてやってみよう。そして、人にも自分にも「どうせ、無理」と言うことをやめて、「だったら、こうしたら」と言う生活をしよう。そう、今からね。