4月9日、第4回の在校生未来塾として、月刊ガンガンJOKERで連載中のマンガ家である夏海ケイさんをゲスト講師としてお迎えし、約70名の学生を対象としてご講演いただいた。(夏海ケイさんは、JAM日本アニメ・マンガ専門学校の卒業生である。)
演題は、「夢の実現のために」であった。
夏海さんは新潟生まれの新潟育ちで、現在も新潟を拠点として執筆活動をされている。幼い頃のエピソードをいくつか話していただいた中に、現在の「マンガ家 夏海ケイ」を誕生させるに至った印象的な話があった。小学校のときの先生の存在だ。その先生は、夏海さんの「将来はマンガ家になりたい」という作文に、「あなただったら、きっとなれるよ」と言ってくれたのだそうだ。この先生の言葉が背中を押してくれたという。
夏海さんは、マンガ家を目指したお父さんを持ち、幼い頃から絵を描くことが好きで11歳頃からマンガ誌に自分の書いた作品を投稿していた。その後、専門学校に進学を希望するが、家族からは(やはり)反対されたらしい。マンガ家を目指した家族が居ても、そんなものかと思わされたが、「それでも、押し切りました」という夏海さんの、華奢な外見からは想像できないほどの力強さに、ちょっと驚かされた。
専門学校を卒業し、淡々とプロのマンガ家への道を歩んだように見えるが、卒業後2年のアルバイト生活があったことは、あまり注目されない。そんな中、デビューのチャンスを掴んだのは、ある作家の作品が掲載できなかった際に声をかけられた代理原稿の仕事。このときの読者アンケートで圧倒的に支持された夏海さんは、瞬く間に月刊誌の連載をすることとなる。冗談っぽく「私の強みは、描くのが速いこと」とおっしゃっていたのは、「速ければそれだけチャンスを掴む機会が増える」ということらしい。
プロとして活躍する今、「自分が妥協したレベルの作品でお金をもらいたくない」という仕事へのこだわりを語ったあたりに、未来のプロを目指す在校生に対するヒントが隠されていたような気がする。それと同時に、リフレッシュも重要な要素だとも語った。自分のパフォーマンスを最高にするための方法を見つけること、リフレッシュ方法を見つけること。学生時代の勉強や社会人になってからの仕事を考えてみれば、なるほど、これらは、ある意味で人生を左右するほど重要だ。
今回の講演を終えて感じた、夏海さんの夢を実現させた二つの原動力。
一つは、静かな語りの中に秘められた、家族の反対さえ押し切る強い意志。もう一つは、巡り会ったチャンスを掴み取るための能力。これらの強力な原動力を、先生という存在や学校という空間が少しでも後押しできたとしたら、こんなに嬉しいことはない。
未来の新潟のマンガ界が楽しみになって、帰り道に寄った書店で夏海ケイの名前を探した。学校の職員として嬉しい夜であった。