お役立ちコラム
2021年12月8日(水)
街にある看板や家に届く飲食店のチラシ、可愛いお菓子のパッケージ。
これらの印刷物は、すべてグラフィックデザイナーによって作られています。
デザインの力を使い、一瞬でメッセージを伝えられるグラフィックデザイナーに憧れを持つ人も多いのではないでしょうか。
しかし、「グラフィックデザイナーになりたいけど、どうやったらなれるの?」と疑問に思う人や「未経験でも大丈夫?」と不安に思う人もいるかもしれません。
この記事では、グラフィックデザイナーのなり方や仕事内容、関連する資格について詳しく解説します。
グラフィックデザイナーとは、企業や広告代理店からの依頼を受け、チラシやポスターなどの紙媒体を作成する仕事です。
商品・サービスには、作り手の思いが込められています。
その思いを形にし、届けたい人へわかりやすく伝えるのがグラフィックデザイナーの仕事です。
まだ世にない物を作るため、できあがるまでは試行錯誤の連続ですが、完成した時の達成感やお客様からのうれしい反応は、グラフィックデザイナーならではの醍醐味といえるでしょう。
グラフィックデザイナーになるには、芸術大学・専門学校へ進学する方法や、独学で学ぶ方法があります。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、自分の状況に合った方法を選ぶことが大切です。
4年制の芸術大学では、グラフィックデザイナーの基礎から応用まで、じっくり学ぶことができます。
また、芸術大学は大手企業への就職が有利だといわれています。
広告会社の中には、芸術大学卒業者に限定して採用を行っているところもあります。
一方で、芸術大学への進学は、入試のための準備と入学後の学費が大きな負担となります。
芸術大学の入試にはデッサンの実技試験があることが多く、求められる技術も高いため、高校在学中に1年以上予備校へ通うことが一般的です。
また、芸術大学の学費は、国立大学で年間80万円〜100万円、私立大学で年間180万円〜200万円です。
1人暮らしでは家賃や生活費も必要なため、学費と合わせ、4年間で1,000万円以上かかることもあるでしょう。
専門学校は就職に力を入れているため、グラフィックデザイナーに求められる知識と技術を効率良く学ぶことができます。
市町村や地元企業と連携し、ロゴや商品のパッケージ制作など実践的なことを行う学校もあります。
学生のうちから実践経験を積むことで、将来に活かせる技術が身につきます。
また、専門学校では就職のサポートが手厚いです。
自己分析や業界分析、マナー研修も充実しているため、自分の夢を叶えやすい環境が整っています。
専門学校は2年から3年制が多く、学費は年間80万〜120万円です。
大学に比べて経済的負担は軽くなりますが、大手企業の採用は大卒限定のところが多いため、就職の選択肢が狭くなる可能性もあるでしょう。
独学では、オンライン講座や書籍、YouTubeを使って勉強する方法があります。それぞれについて説明します。
グラフィックデザイナーを育成するスクールでは、オンライン講座を開講しているところもあります。
オンライン講座では、IllustratorやPhotoshopの基本的な使い方を学び、実際にソフトを使ってみます。
基本的には動画の視聴のみですが、自分の作品を有料で添削してくれるケースもあるようです。
オンライン講座は半年程度が多く、費用は20万円ほどです。
グラフィックデザイナーは、IllustratorやPhotoshopを使う技術や、文字や色に関するデザインの知識が必須です。
これらについての書籍を読み、実践することで習得できるでしょう。
また、YouTubeでは編集ソフトの使い方を解説している動画があります。
実際に使ってみて、わからない部分が出てきたら、YouTubeを視聴すれば解決できるかもしれません。
独学は、自分のペースで勉強することができ、大学や専門学校に入るよりも費用を安く抑えることができます。
しかし、技術の習得に時間がかかったり、仲間や相談相手がいないため、挫折する恐れもあります。
独学では目的をはっきり持ち、期限を決めて勉強しなければなりません。
グラフィックデザイナーは、「思いをくみ取り、適切な方法でデザインを制作し、クライアントの目的を達成すること」が求められます。
デザインの技術はもちろんのこと、相手の要望を正確に把握するヒアリング能力や、チームで円滑に働くためのコミュニケーション能力も必要です。
ここでは、グラフィックデザイナーの仕事の流れについて紹介します。
企業や広告代理店から依頼を受け、打ち合わせを行います。
デザインやコンセプト、ターゲットを明確にし、クライアントがイメージする物を把握します。
ここでの打ち合わせを十分に行わないと、デザインが完成した後に大幅な修正が必要になることもあります。
話し合った内容は書面に残し、クライアント側と制作側で作りたいものが一致していることが重要です。
デザイン案を作成し、クライアントにラフ(下書き)を提出します。
ラフでは、簡単なレイアウトを作成し、企画やデザインの方向性がクライアントのイメージに合っているか確認してもらいます。
制作物によっては、クライアントへの確認を行わずに作業を進めることもあります。
デザインに必要な素材を集めます。
例えば広告を作るときには、写真はカメラマン、キャッチコピーや紹介文はライター、企業のロゴはクライアントに依頼し、データを受け取ります。
写真やイラストなどの素材が集まったら、IllustratorやPhotoshopを使って編集し、デザインを制作していきます。
デザインが完成したら、クライアントへ確認を行います。
修正や変更があるときには連絡をもらい、修正して再度チェックを依頼します。
クライアントから合意を得られたら、デザインを印刷会社に提出し、作業が完了します。
グラフィックデザイナーになるために必須の資格はありませんが、持っていることで自分のスキルを証明できる資格があります。
ここでは、グラフィックデザイナーに関する3つの資格について紹介します。
Illustratorは、イラストを作成したり、文字と画像をデザインするソフトです。
検定には「スタンダード」と「エキスパート」の2種類があります。
「スタンダード」では指示通りの作業、「エキスパート」ではより難易度の高い作品の制作能力が求められます。
各会場によって異なります。
法人や教育機関で受験するときは、団体受験制度が利用できます。
スタンダード試験 7,600円
エキスパート試験 8,600円
スタンダード試験
1部(実技):40分
2部(実践):90分
エキスパート試験
1部(実技、知識問題):50分
2部(実践):90分
実技では、指定された線や図形、文字などをIllustratorで編集します。
実践では、問題文に書かれたテーマにそって、作品の制作を行います。
エキスパート試験には知識問題があり、IllustratorやDTP、Webデザインに関する内容が出題されます。
実技問題(エキスパート試験は知識問題も含む)の得点率が65% 以上で、かつ実践問題の得点率が70% 以上
72.8%(2020年度の平均合格率)
Photoshopは写真やイラストを編集するソフトです。
Illustratorと同様、検定では「スタンダード」と「エキスパート」の2種類があります。
「スタンダード」では指示通りの作業、「エキスパート」ではクライアントのニーズに応じたコンテンツを制作する能力が求められます。
各会場によって異なります。
法人や教育機関で受験するときは、団体受験制度が利用できます。
スタンダード試験 7,600円
エキスパート試験 8,600円
スタンダード試験
1部(実技):40分
2部(実践):90分
エキスパート試験
1部(実技、知識問題):50分
2部(実践):90分
実践では、問題文に書かれたテーマにそって、作品の制作を行います。
エキスパート試験では知識問題があり、Photoshopや画像処理に関する内容が出題されます。
実技問題(エキスパート試験は知識問題も含む)の得点率が65% 以上で、かつ実践問題の得点率が70% 以上
73.9%(2020年度の平均合格率)
DTPとは、DeskTop Publishing(デスクトップパブリッシング)の略で、デザインや編集をパソコンで行い、印刷する方法です。
DTPエキスパート認証試験では、「DTP」「色」「印刷技術」「情報システム」「コミュニケーション」の5つのカテゴリから出題されます。
試験には、「DTPエキスパート」と「DTPエキスパート・マイスター」があります。
2つの違いは実技試験の有無で、「DTPエキスパート・マイスター」のみ実技試験が課されます。
「DTPエキスパート」取得後、実技試験だけを受験し、「DTPエキスパート・マイスター」にアップグレードする制度もあります。
認証期間は2年で、継続には更新試験の受験が必要です。
年に2回実施(8月、3月)
東京、大阪、名古屋、福岡、仙台、札幌、指定講座会場、団体受験会場
※仙台、大阪は8月のみ実施
DTPエキスパート:15,000円
DTPエキスパート・マイスター:21,000円
DTPエキスパートからDTPエキスパート・マイスターへのアップグレード:9,000円
DTPエキスパート
第1部:120分
第2部:120分
筆記試験のみで、多肢選択形式となっています。
DTPエキスパート・マイスター
第1部:120分
第2部:120分
筆記試験で、多肢選択形式となっています。
筆記試験終了後、実技試験の課題を制作し、期限までにファイルを提出します。
課題の内容は、学科試験受験時に公表されます。
2020年の試験では、「20代後半~40代の女性をターゲットとした総合ライフスタイル月刊誌の見開き企画ページのレイアウト」が出題されています。
学科試験:5つのカテゴリでそれぞれ80%以上
実技試験:提出物を総合的に評価
DTPエキスパート:48.7%
DTPエキスパート・マイスター:学科66.7%、実技67.6%
アップグレード:33.3%
(2021年3月実施試験)
グラフィックデザイナーを目指す方に対して少しでも参考になればと、新潟デザイン専門学校(NCAD)に通う諸原日向子さん(グラフィックデザイン科/新潟県・開志学園高校出身)に、気になるあれこれを聞いてみました。
A:元々絵を描くことが好きで高校では油絵も勉強していました。ただ就職のイメージが沸かなかったので、進路検討初期においては、やりたいことよりも実用的なことを優先し資格取得や就職色の強そうなIT・ビジネス系の分野を考えていました。
そんな時、親から「やりたくないことをやるよりも好きなことをやったほうがいいよ」と言われ、内心抱えていた不安もスッキリ、自分の気持ちに正直になりました。
その後、オープンキャンパスに参加してみて卒業生のたくさんの素晴らしい作品を目の当たりにし、デザインとの関わり方が自分の想像以上に様々あることや、何より“やっぱり楽しそうだな”と思えたのが決め手となりました。
A:1つは、初心者からでも安心して学べる体制や環境です。先生たちはみんな優しく、基本的なデザインの考え方やアナログ/デジタルどちらにも対応したスキルを、順をおって丁寧に学んでいくことができます。
入学前は自分に自信が無くて何事にも消極的だった私が、納得のいくデザインが出来上がったりした時の満足感や、先生に褒められたりする中でだんだんと自信がつくように成長できたと実感しています。
2つ目は、学校全体として幅広い学科をカバーしていることです。修了制作の中で必要になった食材の写真を、写真デザイン科の学生に依頼しカメラマン志望学生ならではのアドバイスをもらい、大変参考になりました。
ものつくりにおいて分業することも多い業界なので、在学中から他学科の学生と一緒に一つのものを創り上げることができるのは凄く勉強になっています。
グラフィックデザイナーは、雑誌の広告やポスターなどのデザインを行う職業です。
クライアントの希望を把握し、自分の知識と技術を最大限に使って1つの物を作り上げるため、やりがいがあります。
未経験からグラフィックデザイナーになるには、大学や専門学校への進学、独学で学ぶ方法があります。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、自分の状況に応じて進路を選択することが大切です。
グラフィックデザイナーに必須の資格はありませんが、Illustrator®クリエイター能力検定、Photoshop®クリエイター能力検定、DTPエキスパート認証試験では自分のスキルを証明できるため、取得して損はないでしょう。
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